特定技能雇用契約受入企業届出報酬

特定技能の雇用契約書で見られる6つの条件|賃金・労働時間・一時帰国・届出

内容確認基準日:2026-09-13

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この記事のポイント

  • 審査されるのは契約書と雇用条件書の2通。不備が出るのは後者
  • 賃金は日本人と同等以上。求められるのは金額ではなく比較の説明
  • フルタイムは週5日以上かつ年217日以上、週30時間以上
  • 帰国旅費を報酬から控除して積み立てることは認められない
  • 派遣が使えるのは農業と漁業だけ。変更したら14日以内に届出

特定技能の雇用契約書は、日本人を雇うときの契約書とは別の基準で審査されます。労働基準法を満たしていれば通る、というものではありません。特定技能基準省令第1条が、労働関係法令への適合に加えて、分野別の告示を除いて8つの条件を重ねています。この記事では、そのうち実務で不備が出やすい6つを扱います。

そして提出するのは契約書1通ではなく、参考様式第1-5号の特定技能雇用契約書と、第1-6号の雇用条件書の2つです。実務で不備が出るのは、ほとんど後者のほうです。

賃金は「日本人と同等以上」では足りない

第1条第1項第3号は、報酬の額が日本人が従事する場合の額と同等以上であることを求めています。条文はここまでですが、審査で見られるのは説明のほうです。

同程度の技能等を持つ日本人労働者がいる場合は、その外国人が任される職務内容と責任の程度がその日本人と同等であることを説明したうえで、報酬が同等以上であることを説明します。いない場合は、賃金規程があればそれに照らして、なければ職務内容と責任の程度が最も近い職務を担う日本人と比べてどう異なるかという観点から説明します。提出するのは参考様式第1-4号の「特定技能外国人の報酬に関する説明書」です。

技能実習から切り替える人については、運用要領がもう一段踏み込んでいます。技能実習2号修了者はおおむね3年間、3号修了者はおおむね5年間日本で技能実習を修了した者なので、従事しようとする業務についておおむね3年程度または5年程度の経験者として取り扱う必要がある、としています。

そのうえで、自社で技能実習生として受け入れたことがある人を特定技能外国人として雇う場合は、実習2号修了時の報酬額を上回るだけでは足りません。実際に3年程度または5年程度の経験を積んだ日本人の技能者に払っている報酬額とも比べて設定します。ここを実習時代の賃金の延長で組むと、説明書が書けなくなります。

他の受入れ機関で受け入れられていた技能実習生や、留学生だった人を新たに雇う場合は扱いが違います。この場合は、雇用する側の就業規則等に従って賃金を適切に設定する、とされています。

なお「報酬」には、通勤手当・扶養手当・住宅手当など実費弁償の性格を持つもの(課税対象となるものを除く)は一般に含まれません。実費弁償の性格を持つ手当を積んで額面を合わせる、という設計は通りません。役職手当のように職務に対して支払うものは報酬に含まれます。

所定労働時間は、パートと比べない

第1条第1項第2号は、所定労働時間が「特定技能所属機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること」を求めます。

この「通常の労働者」はフルタイムで雇用される一般の労働者を指し、アルバイトやパートタイム労働者は含まれません。そして本制度における「フルタイム」は、原則として労働日数が週5日以上かつ年間217日以上、週労働時間が30時間以上と定義されています。

ここから出てくる帰結が1つあります。特定技能外国人はフルタイムで業務に従事することが求められるため、複数の企業が同一の特定技能外国人を雇用することはできません。副業として週に何日か、という受け入れ方は制度上できません。

変形労働時間制で雇う場合は、本人が十分に理解できる言語を併記した年間カレンダーの写しと、1年単位であれば労働基準監督署へ届け出た協定書の写しが要ります。

一時帰国の休暇を、契約書に書く

見落とされやすいのが第1条第1項第5号です。外国人が一時帰国を希望した場合に、必要な有給休暇を取得させるものとしていること。

運用要領は、この扱いを雇用契約で定めるよう求めています。すでに労働基準法上の年次有給休暇を全て取得した人から一時帰国の申出があった場合にも、追加的な有給休暇や無給休暇を取得できるよう配慮することが望まれる、とされています。

断れる場合は限られます。「業務上やむを得ない事情」とは、その外国人が担当する業務を他の労働者が代替することが不可能で、休暇取得希望日に本人が業務に従事しなければならないことに合理的な理由がある場合をいう、と定義されています。人手が足りないから、では足りません。認めない場合は代替日を提案するなどの配慮をするよう、あわせて書かれています。

一時帰国のために休暇を取得したことを理由に就労上の不利益な扱いをしていることが判明した場合は、基準に不適合となることもあり得る、とされています。家族が「短期滞在」で来日した場合についても、滞在中に有給休暇を取得できるよう配慮しなければなりません。

帰国旅費と、積立ての禁止

第1条第2項第1号は、本人が帰国旅費を負担できないときに受入企業が負担し、出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしている、という定めです。

負担できない理由は問われません。行方不明となった場合を除き、帰国することとなった原因を問わないと書かれています。「必要な措置」には、旅費の負担に加えて、航空券の予約と購入、帰国までに必要に応じて行う生活支援が含まれます。

ここで1つ、やってはいけないことが明示されています。帰国旅費を確保しておくために報酬から控除して積み立て、受入企業が管理することは、金銭その他の財産の管理に当たり得るため認められません。実習生の受入れで積立てを行っていた会社は、同じやり方を持ち込めません。

経営上の都合で負担が困難になる場合に備えて、登録支援機関や関連企業などの第三者と協定を結んでおくことが望まれる、とされています。

派遣が使えるのは2分野だけ

第1条第1項第6号は、派遣の対象とする場合に派遣先の氏名または名称・住所と派遣の期間が定められていることを求めます。ただしその前に、分野の制限があります。

特定技能外国人を派遣形態で雇用できる分野は、農業分野と漁業分野とされています(令和7年4月1日時点)。これ以外の分野で派遣は認められません。

派遣先と派遣期間は、原則として在留諸申請の際に定まっている必要があります。受入れ後に、提出した派遣計画書に記載のない派遣先へ派遣する場合は、あらかじめ特定技能雇用契約の変更の届出を行います。直接雇用から派遣雇用に変更する場合は、派遣開始のおおむね2か月前に雇用契約を締結したうえで届出が必要です。

署名の前に、本人が読めているか

これは全項目に共通してかかる条件です。特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)と雇用条件書(参考様式第1-6号)は、申請人が十分に理解できる言語により作成し、申請人が内容を十分に理解したうえで署名していることが求められます。

出入国在留管理庁は10か国語の翻訳様式をウェブサイトに掲載しています。本人が日本語を十分に理解できる場合を除き、日本語版だけを渡して署名をもらう形では、この条件を満たしません。

契約を変えたら14日以内

締結して終わりではありません。特定技能雇用契約を変更したとき、終了したとき、新たに締結したときは、事由が生じた日から14日以内に地方出入国在留管理局へ届け出ます(入管法第19条の18第1項、施行規則第19条の17第2項)。軽微な変更は除かれます。

届出の対象になる変更事項は、雇用条件書の項目に対応しています。運用要領は、別表に掲げた変更事項と特記事項はあくまでも具体例であり、届出の対象となる変更事項は別表に記載されているものに限られない、と断っています。

賃金について別表が挙げているのは、基本賃金の減額、支給方法の変更、手当の廃止や減額、割増賃金率を減らすこと、昇給・賞与・退職金を「有」から「無」にすること、休業手当を減らすこと——条件が下がる側です。単純な昇給は挙がっていません。直前の休暇の欄が「休暇日数を減らす場合には届出が必要(増やす場合には届出は不要)」と書いており、別表がこの考え方で作られていることが分かります。

ただし、在留諸申請のときに報酬額を決める比較対象とした日本人労働者が変わり、それに合わせて報酬額を変えた場合は、報酬に関する説明書(参考様式第1-4号)の提出が求められます。

届出の不履行と虚偽の届出は罰則の対象です。届出は出入国在留管理庁電子届出システムからも行えます。ただし持参または郵送で提出した場合は、在留諸申請および届出における提出書類の省略を認める機関ではなくなる、とされています。

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差別的取扱いの禁止は、賃金だけの話ではない

入管法第2条の5第2項は、外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について差別的取扱いをしてはならないことを、基準に含めるものとしています。

福利厚生施設として運用要領が挙げているのは、社員住宅、診療施設、保養所、体育館です。社員寮の利用条件を日本人と分けている、健康診断の扱いが違う、といった点は契約書の文面に出ないことが多くあります。

よくあるご質問

自社の雇用契約書の書式を使ってもよいですか。

参考様式でなければならないという定めはありませんが、審査で確認されるのは参考様式第1-5号と第1-6号に対応する内容です。様式を自作すると、記載漏れの確認に手間がかかります。翻訳様式が10か国語で用意されている点も含め、参考様式を使うほうが早く済みます。

試用期間を設けられますか。

労働関係法令に適合する範囲であれば設けられます。ただし試用期間中の賃金を下げる設計は、日本人と同等以上という第3号との関係で説明が必要になります。同じ職務を担う日本人に試用期間の減額を適用していない場合、外国人にだけ適用する理由を説明できません。

週4日勤務の契約はできますか。

できません。本制度のフルタイムは原則として週5日以上かつ年間217日以上、週30時間以上です。週4日では所定労働時間が通常の労働者と同等になりません。

賃金を上げたら、届出は要りますか。

単純な昇給であれば、別表に挙げられていません。届出が要ると明示されているのは、基本賃金の減額や手当の廃止など条件が下がる側です。ただし、報酬額を決めるときに比較した日本人労働者が変わったことに伴う変更は、報酬に関する説明書の提出対象になります。

契約書は何語で作ればよいですか。

日本語と、本人が十分に理解できる言語の併記です。「十分に理解することができる言語」は母国語には限られませんが、本人が内容を余すことなく理解できるものである必要があります。

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