特定技能で人を採ると決めた日、多くの担当者がまず開くのは書類の一覧である。開いて、閉じる。何十行も並んだ様式の名前を見て、これは自社で捌けるのだろうか、と思う。

その感覚は、半分正しい。

書類の総量は確かに多い。ただし全部が同時に要るわけではない。特定技能の手続きは段階に分かれていて、段階ごとに「誰が」「何を」作るのかが決まっている。順番に見れば、自社で書くものは意外と少ない。

書類は3つの束に分かれている

出入国在留管理庁は、受入れ機関がやることを Step で並べている。国内にいる外国人を採る場合は Step 1 から 6、海外から呼ぶ場合は Step 1 から 9 である(出入国在留管理庁「受入れ機関の方」、2026年8月27日確認)。

このうち書類が発生するのは、実質3か所しかない。

  • 雇用契約を結ぶとき
  • 1号特定技能外国人支援計画の作成
  • 入管への申請

順に見ていく。

① 雇用契約:先に済ませておくものがある

Step 2 が雇用契約の締結にあたる。ここは通常の労働契約と違うところが2つある。

1つは、特定技能雇用契約に関する基準を満たす必要があること。労働関係法令を守っているだけでは足りない。基準の中身は運用要領に書かれている。

もう1つが、意外と見落とされる。原文はこうである。

また、事前ガイダンスや健康診断はStep4の入管への申請前に行う必要があります。

事前ガイダンスと健康診断は、入管に申請する前に終わっていなければならない。申請書類を揃えてから慌てて予約を取る、という順番では間に合わない。契約の話をしている段階で、この2つは動かし始めておくものだと考えたほうがよい。

さらに、相手の国籍国によっては、その国が定めた送出手続がある。日本と協力覚書(特定技能MOC)を結んだ国では、その手続を行ったことを証明する書類の確認が求められる場合がある。国ごとに違うので、採用する国が決まった時点で一度確認しておく。

② 支援計画:委託できるが、作るのは受入れ機関である

特定技能1号を受け入れる場合、1号特定技能外国人支援計画が要る。これは入管への申請時に提出するものなので、申請の前に作り終えている必要がある。

ここで多い誤解が1つある。原文を引く。

支援の実施については所属機関で行うほか、登録支援機関にその全部の実施を委託することができます。

委託できるのは実施である。計画そのものは受入れ機関のものとして作る。もっとも、実務上は登録支援機関が計画の作成を手伝うことが多く、支援を委託する前提であれば、機関を決めてから一緒に作るほうが早い。逆に言えば、支援機関を決めていない段階で計画だけ先に完成させようとすると、二度手間になりやすい。

自社で支援を実施する場合は、支援体制の基準を満たしていることを自分で示すことになる。ここが重くて委託を選ぶ会社が多い。

③ 入管への申請:国内か海外かで、まったく別のものになる

同じ「入管への申請」でも、対象が日本にいるかどうかで手続きの名前が変わる。

国内に在留中の外国人を採る海外から呼ぶ
申請の種類在留資格変更許可申請在留資格認定証明書交付申請
申請する人原則として外国人本人所属機関が代理人として申請できる
このあとの流れ許可を受けたら就労開始証明書を本人へ送付 → 査証申請 → 入国

海外から呼ぶ場合は、証明書が出てからさらに在外公館での査証申請が挟まる。就労開始までの日数を見積もるときは、ここを忘れると計画が狂う。

申請の窓口についても、原文は明確である。

申請は所属機関の本店所在地を管轄する入管の窓口に提出いただくか、オンラインでも申請いただけます(事前に利用者登録をする必要があります。)郵送での申請は受け付けておりません。

郵送は使えない。オンラインを使うなら利用者登録が先に要る。これも申請直前に気づくと止まる類のものである。

なお、申請を取り次ぐ制度がある。所属機関や登録支援機関の職員は、地方出入国在留管理局長の承認を受ければ、在留諸申請を取り次ぐことができる。承認を持っている登録支援機関に頼めば、窓口へ行く手間はそちらへ回せる。

具体的な様式は、ここでは書かない

特定技能の申請書類は、分野・国内外・在留資格の別で組み合わせが変わる。さらに簡素化の取り組みが続いており、様式や必要書類は改正のたびに動く。出入国在留管理庁自身が「申請書類の簡素化・枚数削減に係る取組について」を掲載しているとおりである。

だから、様式番号と部数は必ず一次情報の一覧で確認してほしい。記事や他社サイトに書かれた一覧を信じて揃えると、古い様式で窓口に行くことになる。

就労が始まってからも書類は続く

冒頭で「自社で書くものは意外と少ない」と書いた。申請までの話としては、これは本当である。

ただし手続きは入国で終わらない。原文はこうである。

受入れ後、所属機関や登録支援機関は四半期に一度入管に対し受入状況や支援実施状況の届出を行っていただく必要があるほか、雇用契約に変更等があった場合も届出をする必要があります

四半期ごとの届出は、採用した人数が増えるほど積み上がる。1人目のときは片手間でできても、5人、10人になると誰かの仕事として立てないと回らない。

登録支援機関に委託するかどうかを決めるとき、多くの会社は入国までの手間で比べる。実際に効いてくるのは、その後に毎年続くこちらのほうである。

どこから手をつけるか

書類の一覧を上から順に埋めていく必要はない。先に決まるものから決めていくほうが早い。

採用する国が決まれば、送出手続の有無が決まる。国内にいる人を採るのか海外から呼ぶのかで、申請の種類が変わる。支援を委託するかどうかは、支援計画を誰と作るかに直結する。逆に、この3つが宙に浮いているうちは、どの様式が要るのかも決まらない。

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