特定技能1号の生活オリエンテーションは、社宅の使い方を説明するだけの入社案内ではありません。受入企業は、外国人が日本で職業生活・日常生活・社会生活を安定して送れるよう、必要な情報を本人が十分に理解できる言語で伝える義務があります。支援を登録支援機関へ全部委託する場合は登録支援機関が実施できますが、受入企業は委託内容と実施記録を確認できる状態にしておく必要があります。
出入国在留管理庁の参考様式では、生活オリエンテーションは入国後、または在留資格変更許可後に遅滞なく実施し、原則として1人につき8時間以上と示されています。説明を終えたら、参考様式第5-8号「生活オリエンテーションの確認書」に実施日時と説明者を記録し、本人の署名を受けて保管します。
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| 項目 | 実務で確認すること |
|---|
| 対象 | 1号特定技能外国人。支援計画に基づく義務的支援として実施する |
| 時期 | 入国後、または在留資格変更許可後に遅滞なく行う |
| 言語 | 本人が十分に理解できる言語を使う。通訳を手配する場合は担当者も記録する |
| 時間 | 原則8時間以上。本人が理解できるまで必要な時間を確保する |
8時間は、教材を再生した時間だけを満たせばよいという意味ではありません。本人の居住地、勤務先、交通手段、母語、家族状況などに合わせ、必要な手続や相談先を具体的に示し、質問へ答えられる形にします。
参考様式第5-8号は、本人が説明を受けたことを確認する内容を6分野に整理しています。実施担当者は、全国共通の制度説明と、本人が暮らす地域の情報を組み合わせて準備します。
1. 日本での生活一般
金融機関の利用、医療機関の受診、交通ルールと交通機関、生活ルール・マナー、買い物、気象・災害情報の取得方法、日本で違法となる行為、出産・子育ての制度などを説明します。
次の資料を用意すると、説明が抽象的になりにくくなります。
- 通勤経路と、電車・バスの乗り方
- 最寄りのスーパー、銀行・ATM、郵便局
- ごみの分別表と収集日
- 住居の設備、騒音、共用部のルール
- 自治体の多言語生活情報
- 災害情報を確認できるアプリやウェブサイト
2. 国や自治体への届出と公的手続
住居地や所属機関に関する届出、社会保障、税などの手続を説明します。説明だけで手続を本人任せにせず、必要に応じて窓口への同行や書類作成の補助も行います。
受入れ前に、次を一覧にしてください。
- 住民登録を行う市区町村の窓口
- 健康保険、年金、雇用保険に関する手続
- 所得税と住民税の基本的な仕組み
- 転居、退職、転職時に必要な届出
- 在留カードの携帯や在留期間更新に関する注意
3. 相談・苦情の連絡先
受入企業または登録支援機関の相談担当者と、国・地方公共団体の相談窓口を伝えます。電話番号を読み上げるだけでなく、母語で相談できる時間、連絡方法、休日・夜間の連絡先を紙またはデータで渡します。
本人が直属の上司には相談しにくい場合もあるため、会社の指揮命令系統とは別に相談できる連絡先を示してください。
4. 理解できる言語で受診できる医療機関
本人が十分に理解できる言語で診療を受けられる医療機関や、医療通訳につながる窓口を案内します。通常診療だけでなく、夜間・休日の受診先、救急車を呼ぶ番号、服薬やアレルギーを伝える方法も確認します。
5. 防災・防犯と緊急時の対応
地震、台風、大雨などの災害情報、避難場所、避難経路、110番・119番の使い分け、急病時の連絡方法を説明します。住居と勤務先の両方から行ける避難場所を、地図で一緒に確認してください。
6. 法的保護に必要な情報
入管法や労働法に違反する事実を知ったときの対応、労働基準監督署や地方出入国在留管理局などの相談先、在留カードを取り上げられた場合などの相談方法を説明します。
法的保護に関する説明は、内容を適切に説明できる人が行う必要があります。担当者名と役職は記録に残します。
説明内容が多いため、1日ですべて行う必要はありません。本人の負担と理解度を見ながら分けて実施し、合計時間と各回の内容を記録します。
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| 回 | 主な内容 | 確認すること |
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| 1 | 住居、生活ルール、買い物、交通 | ごみ出しと通勤経路を本人が説明できるか |
| 2 | 住民登録、社会保障、税、銀行等 | 必要な窓口と持ち物を理解したか |
| 3 | 医療、防災、防犯、緊急連絡 | 110・119、医療機関、避難場所を確認したか |
| 4 | 相談先、労働・入管上の保護、質疑 | 相談先を本人の端末や配布資料へ保存したか |
時間配分は一例です。本人が既に知っている内容でも、説明を省略して短時間で終わらせるのではなく、現在の勤務・生活環境で必要な事項を理解しているかを確認します。
出入国在留管理庁は、生活・就労ガイドブックや、多言語の生活オリエンテーション動画を公開しています。共通事項を説明する教材として活用できます。
ただし、全国共通の動画だけでは、本人の地域のごみ出し、最寄りの医療機関、通勤経路、社内の相談担当者までは分かりません。動画を利用する場合も、次を別に行います。
- 本人が十分に理解できる言語の教材を選ぶ
- 視聴中または視聴後に質問へ対応できるようにする
- 居住地と勤務先に固有の情報を補う
- 理解できた内容と不明点を本人に確認する
- 視聴時間、補足説明、担当者を実施記録へ残す
生活オリエンテーション後は、参考様式第5-8号へ実施日、開始・終了時刻、実施者を記入し、外国人本人に内容を確認してもらったうえで署名を受けます。この確認書は入管へ都度提出する書類ではなく、支援を実施した事務所で保管します。
あわせて、支援の管理簿へ次を記録します。
- 本人の氏名、生年月日、国籍・地域、性別、在留カード番号
- 実施日時と場所
- 提供した情報の内容
- 対面、動画、通訳などの実施方法
- 実施担当者と、法的保護に関する説明者の氏名・役職
- 使用した言語、教材、配布資料
- 質問と追加対応の内容
確認書の署名だけを受け、説明内容や担当者の記録が残っていない状態は避けます。登録支援機関へ委託している場合は、確認書と管理記録をいつ受入企業へ共有するかも決めてください。
技能実習2号の良好修了者や留学生などを、同じ会社で続けて特定技能1号として雇用し、生活環境に変化がない場合でも、生活オリエンテーションは必要です。出入国在留管理庁の参考様式の解説では、この場合でも4時間未満では適切に行ったとはいえないとされています。本人が既に理解していることを確認しながら、在留資格、相談先、税・社会保障など特定技能として必要な説明を行います。
転職した外国人にも、新しい勤務先と生活環境に応じた生活オリエンテーションを実施します。以前の会社で受けた確認書を、そのまま新しい会社の実施記録として使うことはできません。
事前ガイダンスは、雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請の前に、労働条件、活動内容、入国手続などを説明する支援です。生活オリエンテーションは、入国後または変更許可後に、日本で生活するための具体的な情報を提供します。
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| 支援 | 主な時期 | 主な内容 |
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| 事前ガイダンス | 在留諸申請の前 | 労働条件、活動内容、入国手続、保証金徴収の有無など |
| 生活オリエンテーション | 入国後・変更許可後、遅滞なく | 生活、公的手続、相談、医療、防災、法的保護 |
事前ガイダンスを長く行っていても、生活オリエンテーションを省略したことにはなりません。支援計画と実施記録を分けて管理します。
特定技能1号の受入れ全体の流れを見る
登録支援機関へ支援の全部を委託する場合は、契約前に次を確認します。
- 対応できる言語と通訳者の体制
- 8時間以上の説明をどのように組み立てるか
- 全国共通の教材に、地域・会社固有の情報をどう足すか
- 説明者、法的保護の説明者、相談担当者は誰か
- 確認書と管理簿をいつ共有するか
- 本人から質問や相談が出たときの対応方法
- 転職者や継続雇用者への実施方法
- 行政手続への同行など、別の義務的支援との担当分け
金額だけで比較せず、本人の言語、居住地、勤務形態に合わせて実施でき、記録まで確認できるかを比べてください。
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生活オリエンテーションは何時間必要ですか?
原則として、特定技能外国人1人につき8時間以上です。ただし、8時間で自動的に要件を満たすわけではなく、本人が必要事項を十分に理解できるまで行います。同じ会社での継続雇用など生活環境に変化がない場合でも、4時間未満では適切な実施とはいえないとされています。
オンラインや動画だけで実施できますか?
公的な多言語動画は教材として利用できますが、本人の地域や勤務先に固有の情報を補い、質問に対応し、理解を確認する必要があります。動画を流した記録だけで終わらせず、実施内容、方法、時間、担当者を残してください。
確認書は入管へ提出しますか?
参考様式第5-8号は都度提出するのではなく、本人の署名を受け、支援を実施した事務所で保管します。必要に応じて実施状況を説明できるよう、管理簿と一緒に整理します。
生活オリエンテーションの費用を外国人に負担させられますか?
義務的支援に必要な費用を、直接または間接に外国人本人へ負担させることはできません。通訳費なども含め、受入企業側で支援計画に必要な体制と費用を見込みます。
登録支援機関へ委託すれば、受入企業は何もしなくてよいですか?
実施そのものは委託できますが、受入企業は支援計画どおりの体制があるか、本人に必要な情報が伝わったか、確認書と記録が残っているかを確認してください。会社固有の相談先、勤務ルール、緊急連絡先などは、受入企業から登録支援機関へ正確に渡す必要があります。
生活オリエンテーションは、在留申請のために書類を作るだけの手続ではありません。入社初期の事故、手続漏れ、生活上の孤立を防ぐため、本人が実際に使える情報として準備することが重要です。
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このページは2026年10月5日に出入国在留管理庁の一次情報を確認しています。制度、様式、教材は変更される場合があります。実施時点の運用要領、参考様式、外国人生活支援ポータルサイトを確認してください。