育成就労では本人の意向による転籍が認められる。ここが技能実習といちばん違うところで、期間の計算に直接効いてくる。
転籍には制限期間がある。Q50の説明はこうなっている。
転籍制限期間は各分野において定めることとしており、1年とすることを目指しつつも、当分の間、人材育成や人材確保等の観点を踏まえ、分野ごとに1年から2年の間で定められます。
つまり、分野によっては1年で転籍の要件が立ち上がる。自社の分野が何年なのかは分野別運用方針を見るしかない。制限期間が2年の分野なら、少なくとも2年は動かない。1年の分野なら、2年目から先は本人の判断が入る。
転籍にはほかの条件も付いている。一定水準の技能と日本語能力を修得していること、民間の職業紹介事業者の紹介を受けていないこと、転籍先が優良な受入機関であること、転籍先が転籍元に一定の金額を支払うこと。この金額は取次ぎと育成にかかった費用として告示で定める額に、転籍元での就労期間に応じた按分率をかけて出す(Q48)。
早く抜けられるほど、転籍元が受け取る額は大きくなる。初期費用が丸ごと消えるわけではない。
育成就労は特定技能へつなぐことを前提に設計されている。3年で終わりではなく、そこからが本番と考えたほうが実態に近い。
ただし、つなぐには試験がいる。ここは技能実習と扱いが変わる。
| 技能実習2号から | 育成就労から |
|---|
| 技能の試験 | 良好修了で免除 | 技能検定3級等または特定技能1号評価試験に合格 |
| 日本語の試験 | 免除 | 日本語能力A2相当以上(日本語能力試験N4等)に合格 |
Q75の記載である。免除が無くなるので、3年目に試験へ届いていなければ移行できない。日本語の目標は3年間を通じてA2相当とされており(Q63)、1年以内にA1相当の試験を受けることも求められる。試験は業務区分ごとに分野別運用方針で定まる。
落ちた場合の救いは一応ある。移行に必要な試験に不合格となったときは、最長1年の範囲で在留の継続が認められる可能性があるとされている。
3年を待たずに移行する道もある。Q76によれば、試験の要件を満たしたうえで、いま在籍している受入機関での就労期間が一定の期間を超えていれば、途中での移行が認められる方針である。この「一定の期間」の具体は公表資料に書かれていない。
特定技能1号の通算在留期間は原則5年以内である。育成就労の3年と足せば8年になる計算だが、この足し算をそのまま社内の前提にはできない。
特定技能1号の5年には、就労していない期間や、移行待ちで「特定活動」だった期間も含まれる。産休・育休や長期の病欠は逆に含まれない扱いがあり、その場合は満了の概ね3か月前までに疎明資料を添えて申請しておく必要がある。数え方は特定技能の在留期間の記事 [blocked]で整理した。
過去に特定技能で在留していた人については、Q61にはっきり書かれている。
既に1号特定技能外国人としてその通算在留期間の上限まで在留しており、特定技能に移行する余地がない者などは育成就労外国人となることはできません。
元技能実習生も同じ考え方が及ぶ。2年以上の技能実習を行った人が再来日して、実習と異なる分野で育成就労に就くことは基本的にできない(Q77)。過去に日本で働いていた人を採る場合、その履歴を先に確認しないと、計画そのものが立たない。
年数の話は、採用のあとで調べるには遅い。
- 自社の分野の転籍制限期間が1年なのか2年なのかを、分野別運用方針で確認する
- 3年目の技能試験と日本語試験に、誰がどう合わせるかを決める。免除は無い
- 日本語のA2相当の講習を100時間以上受ける機会を、3年の中でいつ作るかを決める(Q64)
- 特定技能1号へ移す前提なら、その分野が特定技能の対象かを確かめる
- 過去に技能実習・特定技能で在留していた人かどうかを、採用の段階で聞く
在留期間の決定と更新は出入国在留管理庁の審査による。ここに書いたのは公表資料の記載であって、個別の可否を保証するものではない。判断が分かれそうな事案は、地方出入国在留管理局に相談するのが確実である。
いずれも2026年8月28日に取得した。育成就労は2027年4月1日施行で、運用要領と分野別運用方針は現在も更新が続いている。申請の前に必ず原典を確認してほしい。