「技能実習と特定技能って、結局どう違うんですか」と聞かれることが多い。そこへ2027年から育成就労が加わる。三つ並ぶと、もう誰も説明できなくなる。
順番に整理してもいいのだが、受入企業にとって効いてくる違いは、実のところ多くない。目的と、転籍と、いま契約している監理団体の行方である。この3つだけ押さえれば、あとは付随して決まる。
技能実習の目的は、条文どおりに言えば技能移転による国際貢献だった。人手不足を埋めるための制度ではない、という建前で20年以上運用されてきた。現場の実態と建前がずれていることは、誰もが知っていた。
育成就労は、そこを正面から書き換える。出入国在留管理庁の資料はこう書いている。
人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されました
「人材の確保」が目的に入った。建前と実態が一致したわけで、これは小さな変更ではない。目的が変われば、制度の細部はそこから引き直される。転籍が認められるのも、監理団体が許可制になるのも、元をたどればここに行き着く。
施行は令和9年(2027年)4月1日である。
育成就労は、それ自体で完結する制度ではない。3年かけて特定技能1号に渡すための入口として設計されている。
我が国での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保すること
在留の長さで並べると、こうなる。
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| 期間 |
|---|
| 育成就労 | 3年間 |
| 特定技能1号 | 5年間 |
| 特定技能2号 | 制限なし |
つまり育成就労から入った人材は、うまく進めば3年+5年で8年、その先も残りうる。技能実習の3年(+2年)で帰国、という前提とは、人の設計が根本から違う。
なお、育成就労を経ずに、外国で試験を受けて特定技能1号で入国することもできる。育成就労は唯一の入口ではない。急ぐなら、こちらのほうが早い。
技能実習では、本人の希望による転籍は原則としてできなかった。育成就労は変わる。
育成就労外国人の本人意向による転籍を一定要件の下で認めることなどにより、労働者としての権利保護を適切に図る
「一定要件の下で」の中身が問題になる。資料には、本人意向の転籍の条件としてこう書かれている。
- 育成就労評価試験(基礎級等)に合格していること
- 日本語能力A2.1相当以上の試験(JFT-Basic)に合格していること
後者は「A1相当以上の水準から特定技能1号移行時に必要となる日本語能力の水準までの範囲内で、各分野ごとに設定」とされている。分野によって線が違う、ということである。自社の分野がどこに設定されるかは、分野別の運用方針を見ることになる。
受入企業の側から見ると、これは育てた人材が出ていきうるという話である。技能実習の感覚のまま「3年は動かない」と見込んで採用計画を立てると、外れる可能性がある。
裏を返せば、他社が育てた人材が入ってくる道でもある。どちらに転ぶかは、受入れ後の待遇と環境で決まる。制度が変わったというより、競争の条件が変わったと読むほうが実務には近い。
これがいちばん見落とされている。育成就労では、監理団体にあたる組織が監理支援機関になり、許可制になる。
監理支援機関を許可制とする(許可基準は厳格化。技能実習制度の監理団体も監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行うことはできない。)
「技能実習制度の監理団体も」と、わざわざ書かれている。いま監理団体として動いている組織が、自動的に監理支援機関になるわけではない。許可を取らなければ、2027年4月以降は監理支援事業ができない。
許可の申請は施行日前に受け付けられる(出入国在留管理庁のスケジュール図に「監理支援機関許可 施行日前申請」とある)。育成就労計画の認定も同じく施行日前に申請できる。
したがって、受入企業として確かめておくことは1つである。いま契約している監理団体が、許可申請の準備をしているか。していなければ、2027年4月に監理を受けられなくなる。そのとき慌てて次を探すことになる。
聞き方は難しくない。「監理支援機関の許可申請は、いつごろのご予定ですか」で足りる。準備が進んでいる団体なら即答できるし、答えが濁るなら、それ自体が情報である。
もう1つ増えるのが、外国人ごとに作る育成就労計画である。
育成就労外国人ごとに作成する「育成就労計画」を認定制とする(育成就労計画には育成就労の期間(3年以内)、目標(技能、日本語能力)、内容等が記載され、外国人育成就労機構による認定を受ける)
技能実習計画に相当するものだが、目標に日本語能力が明記される点が違う。3年後に特定技能1号へ渡すことが前提なので、そこへ届く日本語をどう身に付けさせるかを、計画の段階で書くことになる。
実務としては、日本語学習の時間をどう確保するかを、採用前に決めておく必要がある、ということである。就業時間外に本人任せ、という形では計画が通りにくくなる見込みが高い。
2027年4月まで、まだ時間があるように見える。ただ、監理団体の許可申請も育成就労計画の認定も施行日前から動き始めるので、実際に判断が要るのはもっと手前である。
いま確かめておけることは3つある。
- 契約中の監理団体が、監理支援機関の許可を申請する予定か
- 自社の分野が育成就労産業分野に入っているか(新しく追加された分野もある。令和8年1月23日の閣議決定で追加が決まっており、受入れの開始は準備が整い次第とされている)
- 3年後に特定技能1号へ渡す前提で、日本語学習の時間をどう確保するか
3つとも、制度の施行を待たずに聞ける。むしろ、施行直前に一斉に確認が始まると、答える側が追いつかなくなる。
育成就労はいつから始まりますか。
施行は令和9年(2027年)4月1日です。
技能実習と育成就労で、いちばん大きな違いは何ですか。
制度の目的です。技能移転による国際貢献から、人手不足分野における人材の育成・確保に変わりました。ここが全部の出発点になります。
いま契約している監理団体は、そのまま使えますか。
自動では監理支援機関になりません。許可を受けなければ2027年4月以降は監理支援事業ができないため、契約中の団体に申請予定を確かめておく必要があります。