「求人さえ出せば、特定技能はまだ採れる」。外食業の採用担当者の多くが、今年の春までそう考えていたはずです。制度は拡大の一途で、受入れ見込数も1月に123万人規模へ引き上げられたばかりでした。ところが2026年4月13日、出入国在留管理庁は外食業分野の在留資格認定証明書(COE)の交付を一時停止しました。この日以降に受理された海外からの呼び寄せ申請は、不交付です。枠が広がり続けるはずの制度で、なぜ突然「受け入れられない分野」が生まれたのでしょうか。

答えは、制度に最初から組み込まれていた「受入れ見込数」という上限の仕組みにあります。そして7月3日、入管庁が公表した最新データを見ると、外食業の次に枠が埋まりつつある分野もはっきり読み取れます。自社の分野があとどれくらい採用できるのか。この数字を知らずに来年度の採用計画を立てるのは、残席を確認せずに団体旅行の予約を進めるようなものです。

外食業で何が起きたのか:95.4%という数字

まず事実関係を整理します。特定技能1号には分野ごとに「受入れ見込数」が設定されています。2026年1月23日の閣議決定で、2029年3月までの見込数は全19分野合計で約80.6万人と定められました。外食業分野の見込数は5万人です。

この「見込数」という言葉が曲者です。目安に聞こえます。実際には、政府基本方針で**「大きな経済情勢の変化が生じない限り、受入れの上限として運用する」**と明記されており、事実上の定員です[2]。

外食業の在留者数は2026年2月末時点で約4.6万人(速報値)に達し、5月中に5万人の上限を超えると推計されました。これを受けて農林水産大臣が法務大臣に交付停止を要請し、4月13日から停止措置が発動されたのです[1]。措置の内容は次のとおりです。

手続き4月13日以降の申請4月13日より前の申請
在留資格認定証明書(海外からの呼び寄せ)不交付変更申請を優先しつつ、上限の範囲内で順次交付
在留資格変更(国内在住者の切り替え)原則不許可(※)上限の範囲内で順次許可
在留期間更新(既に雇用中の人材)許可を継続許可を継続

※医療・福祉施設給食製造の技能実習2号修了者などには配慮措置があります[2]。

注目すべきは、すでに雇用している特定技能人材の在留期間更新は影響を受けないという点です。止まったのは新規の入口だけです。それでも、外食業で「来期は特定技能で5名採用」と計画していた企業にとって、この計画は白紙になりました。受入れ再開の時期は未定で、見込数の再設定は2028年度末とされています[2]。つまり外食業の新規採用ルートは、最長で2年以上閉じたままの可能性があります。

充足率データの読み方:7月3日公表の最新値

では、他の分野は安全なのでしょうか。入管庁が2026年7月3日に公表した「特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)」[3]から、主要分野の充足率を見てみます。

分野受入れ見込数在留者数充足率年間増加数
外食業50,00047,71495.4%16,498
飲食料品製造業133,50096,36772.2%20,509
建設76,00051,05567.2%9,957
介護126,90074,74558.9%26,332
農業73,30039,95054.5%9,438
航空4,9002,57752.6%937
自動車整備9,4004,92552.4%1,646
造船・舶用工業23,40011,47149.0%1,514
漁業14,8004,84232.7%1,232
工業製品製造業199,50059,03829.6%12,962
ビルクリーニング32,2009,20228.6%2,560
宿泊14,8002,20714.9%1,365
自動車運送業22,1003331.5%332
鉄道2,900592.0%49
全19分野合計805,700404,52750.2%105,373

全体の充足率は50.2%。半分も埋まっていないように見えます。ただ、この平均値はほとんど意味を持ちません。分野ごとの差が大きすぎるからです。

読み方のポイントは、充足率の絶対値と「年間増加数」を組み合わせることです。単純計算で、残り枠を年間増加数で割ると、枠が尽きるまでの残り年数の目安が出ます。飲食料品製造業なら残り約3.7万人を年2万人ペースで消化しているので、このペースが続けば2年弱で外食業と同じ状況に至る計算です。建設は残り約2.5万人を年1万人ペースですから、2年半程度。いずれも2029年3月の見込数再設定を待たずに上限へ到達しうる水準です。

もちろん、このペースがそのまま続くとは限りません。景気や送出国の動向で増加数は変わりますし、政府が見込数を再設定する可能性もあります。それでも外食業の事例が示したのは、上限接近が現実になったとき、停止措置は事前の予告期間をほとんど置かずに発動されるという運用の実態です。3月27日の事前案内から停止まで、わずか17日でした[1]。

自社の分野はどのゾーンにいるか

充足率の表を、採用計画への影響という観点で3つのゾーンに分けて考えると判断しやすくなります。

警戒ゾーン(充足率65%超):飲食料品製造業、建設。このゾーンの企業は、採用を「いつかやる」から「枠があるうちにやる」へ切り替える段階です。COE申請は面接から入国まで通常4〜6か月かかるため、停止措置が発動されてからでは間に合いません。採用予定人数が固まっているなら、申請時期を前倒しし、あわせて国内在住人材(技能実習からの移行、転職者)の採用ルートも並行して確保しておくべき局面です。

注視ゾーン(充足率45〜65%):介護、農業、自動車整備、航空、造船・舶用工業。すぐに枠が尽きる状況ではありませんが、介護は年間2.6万人と全分野で最大の増加ペースを示しています。半年ごとの公表データを確認し、充足率が70%に近づいたら警戒ゾーンの対応に移る、という基準をあらかじめ決めておくと判断が遅れません。

余裕ゾーン(充足率30%未満):工業製品製造業、ビルクリーニング、宿泊、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業など。枠の心配は当面不要です。むしろ2024年・2026年に追加された新しい分野では、受け入れ体制の整備が早い企業ほど、競合が少ないうちに人材市場での認知を確立できます。宿泊や自動車運送業は充足率が一桁〜14.9%で、制度活用はまだ始まったばかりです。

ここで一つ、見落としやすい論点があります。外食業が閉じた影響は、外食業だけにとどまらないという点です。海外で外食業の技能試験に合格しながら入国できなくなった人材や、外食業から他分野への転換を考える国内在住者が、隣接分野である飲食料品製造業や宿泊に流れることが考えられます。隣の分野の停止が、自社の分野の充足ペースを速める。この連鎖まで織り込むと、警戒ゾーンの「残り2年」は、さらに短くなる可能性があります。

枠が切れる前に企業ができる4つの準備

では、具体的に何をしておくべきでしょうか。

第一に、自社の分野の充足率を定点観測することです。入管庁は特定技能制度のページで受入れ見込数と在留者数のデータを更新しています[4]。半年に一度、経営会議の資料に自社分野の充足率と年間増加数を載せる。それだけで「突然の停止措置に驚く側」から「事前に動いていた側」に回れます。

第二に、採用計画の時間軸を逆算で組むことです。海外からの呼び寄せは、求人→面接→雇用契約→支援計画策定→COE申請→査証→入国で4〜6か月、送出国の手続きによってはそれ以上かかります。「来年度の期初に配属したい」なら、申請は今年度の後半には出ている必要があります。警戒ゾーンの分野では、この逆算にさらに「停止リスクのバッファ」を乗せて前倒しする判断が現実的です。

第三に、国内在住人材のルートを確保することです。外食業の停止措置でも、在留期間更新は止まりませんでした。国内で技能実習を修了した人材や、転職を希望する特定技能在留者の採用は、海外呼び寄せより短期間で進められ、停止措置の影響も受けにくい経路です(ただし外食業のように在留資格変更まで原則不許可となるケースもあるため、分野ごとの措置内容の確認は必要です)。

第四に、支援体制のパートナーを早めに決めておくことです。特定技能1号の受け入れには義務的支援が伴い、多くの企業は登録支援機関に委託します。枠の残りが少ない分野ほど、駆け込みの採用が増えて支援機関側の受託余力も逼迫します。地域と分野の実績が合う支援機関を先に見つけておけば、いざ採用を決めたときに申請までの期間を圧縮できます。ヤトエルの無料診断 [blocked]を使えば、所在地・業種・受け入れ予定人数を入力するだけで、条件に合う登録支援機関の候補を数分で絞り込めます。比較検討の段階なら支援機関検索 [blocked]で地域・分野ごとの登録支援機関を一覧できます。

よくある質問

Q. 外食業はもう特定技能を一切採用できないのですか。

新規の海外呼び寄せ(COE交付)は停止中で、在留資格変更も原則不許可です。ただし、すでに雇用している特定技能人材の在留期間更新は通常どおり許可されます。また、医療・福祉施設給食製造に係る技能実習2号修了者などには配慮措置があります[2]。受入れ再開は未定です。

Q. 受入れ見込数は法律上の上限ですか。

法律に人数が書かれているわけではなく、閣議決定される分野別運用方針上の数値です。ただし政府基本方針で「受入れの上限として運用する」とされており、入管法第7条の2に基づく交付停止措置の根拠になります[2]。実務上は定員と考えて計画を立てるべきです。

Q. 育成就労制度が始まると、この枠はどうなりますか。

2027年4月に施行予定の育成就労制度でも、特定技能と同様に分野ごとの受入れ見込数が設定されます。2026年1月の閣議決定では、特定技能と育成就労を合わせた2028年度末までの受入れ上限が計約123万人とされました[5]。育成就労から特定技能1号への移行が本格化すれば、特定技能側の枠の消化ペースはさらに速まる可能性があります。


冒頭の「求人さえ出せば採れる」という前提に戻ります。この前提は、外食業では今年の4月に崩れました。自社の分野で同じことが起きる日を、上の表はある程度の精度で予告しています。残り枠と年間増加数、この2つの数字を手帳に書き写すことから、来年度の採用計画を始めてみてください。

(内容確認基準日:2026年7月27日。制度の運用は変更される可能性があるため、最新情報は出典に記載の官公庁ページでご確認ください。)