育成就労は技能実習の言い換えではない。企業側の費用と手間が増える方向の変更がいくつも入っている。検索で「育成就労 やばい」と打つ人が多いのは、そこが見えにくいからだろう。実務で効く順に並べる。
技能実習では認められていなかった、本人の意向による転籍が入った(Q48)。人権侵害などのやむを得ない事情による転籍は技能実習にもあったが、こちらは事情がなくても動ける。
歯止めはある。転籍先は同一の業務区分内に限られる。転籍を希望する本人が、分野別運用方針で定める水準の技能と日本語能力を身につけていること。転籍制限期間を超えていること。民間の職業紹介事業者の紹介を受けていないこと。転籍先が優良な育成就労実施者であること。転籍先で本人意向の転籍者が占める割合が一定以内であること。この6つが揃って初めて動ける。
転籍制限期間は分野ごとに1年から2年の範囲で決まる(Q50)。1年を目指しつつ、当分の間は分野の事情で2年まで置ける、という書き方になっている。1年を超える期間が設定された分野でも、受入機関の判断で1年に短くできる(Q51)。
転籍元は初期費用の一部を回収できる。転籍先が転籍元へ、告示で定める額に在籍期間の按分率を掛けた金額を払う(Q55)。ただし、この告示はまだ制定されていない。いくら戻るのか、現時点では計算できない。
送出機関が外国人本人から取れる費用の上限は、受入機関が払う月給(所定内月額)の2か月分までとなった。上限を超える費用は、育成就労実施者または監理支援機関が負担する(Q74)。
これは制度の趣旨としては本人の借金を抑えるためのものだが、企業側から見ると、これまで見えていなかった費用が請求書に乗ってくるということでもある。送出機関の手数料水準は国によって差が大きい。自社の相手国でいくらになるのかは、監理支援機関に確認しておいたほうがいい。
就労開始前までに、A1相当以上の試験に合格しているか、認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当講習を100時間以上受けている必要がある(Q56・Q64)。入国そのものの要件ではないので、A1に受かっていなくても入国はできる(Q67)。
そのうえで、3年の間にA2相当の講習を100時間以上受ける機会を、受入機関が提供しなければならない(Q64)。費用は育成就労実施者または監理支援機関の負担(Q66)。
負担が軽くなる点も書いておくと、A2目標講習の受講時間を労働時間として扱う義務までは課されていない(Q69)。オンライン受講も、双方向で同時にやりとりできるなどの条件を満たせば認められる(Q65)。
特定技能1号と育成就労には、分野ごとの受入見込数(受入上限数)が設定されている。2028年度末までの合計で約123万人(特定技能1号80万5,700人、育成就労42万6,200人)である(Q20)。
在留者数が上限を超えることが見込まれると、育成就労については計画の認定が一時的に停止する。すでに雇用契約を結んでいても、原則として認定を受けられず、新たに入国できない(Q22)。
契約を先に決めてから手続を進める段取りだと、ここで止まる。分野の充足状況を見ながら動く必要がある。
技能実習の監理団体が育成就労の業務を行うには、改めて監理支援機関の許可を受ける必要がある(Q33)。自動で切り替わらない。
許可基準も厳しくなった。外部監査人の設置、債務超過がないこと、監理支援を行う受入機関が原則2者以上、常勤役職員が2人以上でありかつ受入機関数を8で割った数と育成就労外国人数を40で割った数を上回ること(Q34)。この人数の条件は、小規模な組合には効く。
委託先の監理団体が許可を取れるかどうかは、受入企業の問題でもある。取れなければ、施行日以降の受け入れ先を探し直すことになる。
育成就労では、原則として家族の帯同を認めていない(Q59)。特定技能1号も同じだが、人材の獲得競争という観点では弱点として残る。
優良な育成就労実施者の基準(Q46)、優良な監理支援機関の基準(Q38)、転籍時の補填額の告示(Q55)は、いずれも未公表である。人数枠が3倍になるかどうかは優良かどうかで決まるので、受入計画の規模がまだ確定しない。
制度が動き出すのは2027年4月1日。ここまでに何をどこまで決められるかは、公表の速さ次第という部分が残っている。
技能実習より企業の負担は重くなりますか。
費用面では重くなる方向である。送出費用の超過分、日本語講習2本ぶんの費用が企業側に寄る。一方で、転籍を減らすために処遇を上げる圧力も働く。
いま技能実習生を受け入れています。施行後どうなりますか。
2027年4月1日時点で来日している技能実習生は、認定計画に基づいて技能実習を続けられる(Q78)。技能実習3号への移行には、施行日時点で2号の活動を1年以上行っていることが必要である。
転籍を止める方法はありますか。
制度上、本人意向の転籍そのものを封じる方法はない。転籍制限期間を分野の上限まで使うことと、処遇で選ばれ続けることの2つしかない。